DXとは?デジタルイノベーションとの違いや関係性を解説
デジタル技術の革新的な進展で、企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)への対応が求められています。しかし、企業が本質的なDXを進めるには、DXやデジタルイノベーションの定義、両者の違いを押さえておくことが肝要です。本記事では、DXとデジタルイノベーションとの違いや関係性を説明します。
また、デジタル庁創設による企業の影響や働き方改革についても説明します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?
DXとは、デジタル技術を活用して、ビジネスプロセスを変革することを指します。企業がDXを推進するには、目的や背景を知っておく必要があります。ここでは、DXについて以下の2点を解説します。
- そもそもDXとは? | 定義
- DX が注目される背景 | 2025年の崖
順を追って説明します。
そもそもDXとは? | 定義
DXとは
DXとは、デジタルトランスフォーメーション(Digital transformation)の略であり、直訳すると「デジタルによる変容」です。ICT技術やデジタルマーケティング分野で使われる言葉ですが、近年、企業における認識も浸透し、一般的に使われる用語となっています。DXの本質的な意味は、デジタル技術を活用して、製品やサービス、ビジネスモデルそのものを変革し、新たな価値を創造することを指します。
DXの定義
2004年当時、スウェーデンのウメオ大学教授であるエリック・ストルターマン氏による論文「Information Technology and The Good Life」にて、DXが提唱されています。この論文で、エリック・ストルターマン氏は、情報技術があらゆる変化を起こしつつあると指摘しています。他方、日本では、経済産業省において2018年に発表した「 DX推進ガイドライン 」において、DXを次のように定義しています。
"企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。(引用)"
(引用)経済産業省:「デジタルトランスフォーメーションを推進するための ガイドライン(DX 推進ガイドライン)Ver. 1.0」
DX が注目される背景 | 2025年の崖
DXが注目される背景において、知っておかなければならないワードとして、経済産業省が警告している「2025年の崖」があります。2025年の崖は、経済産業省が2018年に「DXレポート」で発表した言葉で、複雑化・ブラックボックス化した既存システムを放置した場合における、さまざまな企業損失のシナリオを警告した用語として説明されています。この複雑化・ブラックボックス化した既存システムを使い続けることによって、DXレポートでは、次のような放置シナリオを警告しています。
- 爆発的に増加するデータを活用しきれず、 デジタル競争の敗者に
- 多くの技術的負債を抱え、業務基盤そのものの維持・継承が困難に
- サイバーセキュリティや事故・災害によるシステムトラブルやデータ滅失・流出等のリスクの高まり
(参考・引用)経済産業省:「DXレポート (サマリー)」
このように、DX時代に突入し、革新的なITの進展によって経営環境が大きく変革していく昨今、DXは企業にとって避けて通れない取り組みとなっています。
デジタルイノベーションとの違いや関係性
デジタル技術が急速に進展する昨今、DXやデジタルイノベーションなど、似たような言葉が使われるようになりました。しかし、企業が本質的なDXを進めていくには、この言葉の違いを明確に認識する必要があります。
ここでは、デジタルイノベーションとDXについて説明していきます。
- デジタルイノベーションとは?
- デジタルイノベーションとの違いや関係性
順を追って解説します。
デジタルイノベーションとは?
ここでは、デジタルイノベーションの意味の理解を深めるため、イノベーションの概念を説明したのち、デジタルイノベーションを解説します。
そもそもイノベーションとは
イノベーション(Innovation)とは、マーケティングの用語です。 経済学者ヨーゼフ・シュンペーター氏によって、1912年「経済発展の理論」において、「新結合」というワードを用いてイノベーションの概念が提唱されています。この新結合は、次の5つに分類され、これらによって「創造的破壊」を起こすことがイノベーションであるとヨーゼフ・シュンペーター氏は説いています。
- 新しい生産物の創出
- 新しい生産方法の導入
- 新しい市場の開拓
- 新しい資源の獲得
- 新しい組織の実現
デジタルイノベーションとは
デジタルイノベーションとは、デジタル技術を活用したイノベーションを指します。具体的には、デジタルイノベーションは、新たな技術か否かを問わずにデジタル技術を活用し、「新結合5つの分類」において創造的破壊を起こすことです。たとえ、既存のデジタル技術であっても、新結合が成り立てば、デジタルイノベーションといえるでしょう。
デジタルイノベーションとの違いや関係性
DXは、イノベーションの概念に着目すると、劇的に進化したデジタル技術を活用して、新結合5つの分類において創造的破壊を起こすことといえます。具体的には、AIやビッグデータ、IoTなど、革新的に進化したITを活用して、新結合によりイノベーションを起こすことがDXと解釈できます。DXとデジタルイノベーションは、ともにデジタル技術を用いて新結合を起こすことに相違ありませんが、既存のデジタル技術か否かが大きな違いであると考えられます。
DX時代。デジタル庁創設で今後の企業はどう変わる?
2021年9月1日に発足したデジタル庁。
世界に遜色ないデジタル社会を実現することを目的に、強力にデジタル化を進めるための司令塔としてデジタル庁が創設されました。ここでは、デジタル庁創設で、今後の企業はどう変わるかについて、次を説明します。
- デジタル庁創設の知っておきたい背景
- 行政のデジタル化で変わること
- デジタル庁創設が企業に与える影響
順を追って見ていきます。
デジタル庁創設の知っておきたい背景
新型コロナ感染症対応のなか、政府は、行政サービスや民間におけるデジタル化の遅れが浮き彫りになったことを指摘しています。こうした環境下、発足当時の菅内閣総理大臣は、"思い切ってデジタル化を進めなければ、日本を変えることはできない。"とし、強力にリードする司令塔として、デジタル庁を発足したと述べています。デジタル社会形成の司令塔として、デジタル庁は、デジタル時代の官民インフラを発足から5年の間に、一気呵成に作り上げることを目指すことを掲げています。
デジタル庁は、従来の縦割り行政の非効率さを打破するため、行政手続きの標準化・統一化などのデジタルインフラの構築を推進する、いわゆる行政DXの旗振り役を担っているのです。
(参考・引用)デジタル庁:「デジタル庁発足式を行いました」 (参考)デジタル庁:「組織情報 - デジタル庁」
デジタル社会実現で変わること
コロナ禍で露呈した日本のデジタル化の遅れを解消するため、政府は、関係者が一丸となって取り組む羅針盤として、2021年12月24日に「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を閣議決定しました。この重点計画では、デジタル化推進とその効果を最大化するため、デジタル社会実現に向けた理念や原則を掲げています。とくに、行政DXに大きく関係するのは行政サービスの100%デジタル化を目指す「行政サービスのオンライン化実施の3原則」でしょう。
- デジタルファースト
- ワンスオンリー
- コネクテッド・ワンストップ
デジタルファースト(各種手続きのデジタル申請化)
従来、行政で当たり前だった押印や対面などの本人確認のあり方を見直し、行政手続きをデジタル申請に統一することを指します。デジタル申請化により、場所や時間を選ばす申請が行えるほか、住民票や戸籍謄本などの証明書類がコンビニで受け取れるなど利便性が高まります。
ワンスオンリー(提出した情報は一度きりでOK)
すでに行政が保有している情報は、重複して申請する必要がなくなります。従来は、本人確認のため、各種手続き毎に住所や氏名、連絡先などを申告するとともに、本人確認書類を提示することが基本でした。ワンスオンリーにおいては、マイナンバーを活用することによって、オンラインで本人確認が可能となるとともに、氏名・住所等の個人情報の入力が不要となります。
コネクテッド・ワンストップ(ライフイベント手続きのワンストップ化)
複数の行政機関サービスについて、民間も含めて、ワンストップで実現するものです。たとえば、引越しや出産、死亡などの個人のライフイベントや、法人設立や役員登記などの法人のイベントが対象になります。
(参考)首相官邸:「デジタル・ガバメント実行計画について」
デジタル庁創設が企業に与える影響
デジタル社会を実現することに向け、政府は、次の産業のデジタル化を目指しています。
- 事業者向け行政サービスの質の向上に向けた取組
- 中小企業のデジタル化の支援
- 産業全体のDX (参考)政府CIOポータル:「デジタル社会の実現に向けた重点計画の概要」
事業者向け行政サービスの質の向上に向けた取組
電子署名や電子委任状、商業登記電子申請書など、紙ベースで行っていた手続きをデジタル申請に切り替えます。e-Gov電子申請によって、いつでもどこでも申請可で、申請状況がマイページで確認できるなど、行政手続きが劇的に行いやすくなります。厚生労働省や国土交通省のほか、金融庁や経済産業省などの各省庁の手続きで利用可能です。
(参考)デジタル庁:「e-Gov電子申請」
中小企業のデジタル化の支援
使いやすく安価なクラウドサービスの普及やデジタルツールの多様化を背景に、デジタル化の敷居が低くなり、中小企業においてもデジタル活用がしやすくなりました。中小企業庁は、デジタル化による生産性向上を加速化するため、中小企業に対するIT導入補助金やIT専門家の支援、サイバーセキュリティ支援などを行っています。
(参考)一般社団法人 サービスデザイン推進協議会:IT導入補助金事務局ホームページ
産業全体のDX
産業全体のDXを促進するため、「DX認定制度」「DX銘柄選定」「DX投資促進税制」などさまざまな取り組みが行われています。なかでもDX認定制度は、国が策定した指針を踏まえて、DXに対して優良な取り組みを行う事業者を認定する制度です。DX認定制度事務局となる情報処理推進機構(IPA)を通して経済産業省が認定するフローとなっています。DX認定制度の認定により、DX実現に向けた自社の取り組みを可視化できるほか、社会的認知や企業のブランド力向上が期待できます。
(参考)情報処理推進機構:「DX認定制度 Web申請受付中!」
DX推進と働き方の変革 | DXの肝となるレコードマネジメント
これまで、DXやデジタルイノベーション、デジタル庁創設背景などを通じて、企業がDXに取り組む必要性を説明してきました。ここでは、DXのカギとなるレコードマネジメント、DX推進と働き方改革の3点について以下のとおり解説します。
- レコードマネジメントとは
- DX推進のカギはレコードマネジメント
- ペーパーレス×DXで働き方の変革
順を追って見ていきます。
レコードマネジメントとは
レコードマネジメントとは、記録情報管理のことです。企業における業務上の決定事項やプロセス、結果などの情報を対象に、セキュリティ対策の下、情報の利活用と共有化を可能にする仕組みを指します。急速なデジタル化の進展を背景に、企業活動のさまざまな場面で情報資産が溢れています。レコードマネジメントは、この情報資産を適切に有効利用するための枠組みです。
DX推進のカギはレコードマネジメント
近年、DXの進展を背景に、急速なクラウドシフトや、ビッグデータを活用した意思決定分野における情報利活用など、ビジネス環境は大きな転換期を迎えています。しかし、企業では、業務上の意思決定情報や業務プロセスの結果、さまざまな業務データなど、膨大な情報資産を抱えていますが、適切なレコードマネジメントができていないことが多くあるでしょう。こうした環境下、DXを実現するには、レコードマネジメントの取り組みが不可欠です。適切なレコードマネジメントにより、セキュリティ対策の下、大量な情報を利活用するDX環境の構築が実現できます。 レコードマネジメントについて詳しく知りたい方は、「レコードマネジメントとは」をご参考にしてください。
ペーパーレス×DXで働き方の変革
デジタル庁の創設など、国をあげた取り組みを背景に進展が加速化するDX。クラウドシフトの動きが活発化するなか、働き方改革やコロナ禍も相まり、ペーパーレスの動きも急速に進展しています。しかし、一部企業では、従来の紙・印鑑文化などが抜けきらず、企業方針がDXに目を向けていないケースもあります。こうしたなか、テレワークなどワークスタイルの変革により、ドキュメントの電子化やワークフローの活用、文書管理サービスといった、ペーパーレスの取り組みが加速化しています。DXは、革新的なITを活用することでイノベーションを目指すものですが、その足がかりとして、ペーパーレスによる働き方改革を推進することから、DXに取り組みましょう。
これからペーパーレスに取り組まれる企業においては、単に働き方改革対応や業務効率化のためにデジタル化をするのではなく、真のDXの目的であるイノベーションを見据えた環境を構築することがポイントです。 日本レコードマネジメント株式会社は、ベンダーフリーの立場で、情報資産の有効活用と適正な管理方法について、真のDXを見据えて最適なペーパーレス環境を提案しています。
よろしければ、「ソリューション・サービス(日本レコードマネジメント株式会社)」をご参考にしてください。
終わりに
本記事では、DXの定義やデジタルイノベーションとの違い、デジタル庁創設による企業の影響のほか、DX推進のカギとなるレコードマネジメントを解説しました。
革新的なITの進展により、ビジネス環境が大きく変革していく昨今、DXの取り組みは、企業にとって避けて通れません。DX推進に不可欠なレコードマネジメント体制を構築し、DXの取り組みを加速化させましょう。