電子文書とは?企業が導入を進める5つの理由と法的概念
紙文書を電子化する動きは、昨今のデジタル化に向けた企業の取り組みの一環として必要不可欠なものです。企業に蓄積していく膨大な情報を統制し活用していくためには、適切な電子文書管理システムの導入が必要です。社会問題として深刻化しつつある少子高齢化の問題と、新型コロナウイルス感染拡大防止を実行するためにも、政府が提唱している「働き方改革」による多様な働き方を実現しなければいけません。電子文書管理は、従業員ひとり当たりの労働生産性向上や採用強化などを実現可能とします。企業にとって、継続的な利益向上に必要な施策です。
この記事では、電子文書管理とは何なのかという基礎的な知識と目的、企業が進めるべき理由についてわかりやすく解説していきます。
電子文書管理とは
Word・Excel・会計ソフトなどで作成したデータを電子文書と呼び、さまざまな電子文書を作成から廃棄に至るまで適切な方法で管理し、活用するマネジメントが、電子文書管理です。従来の紙文書管理では実現できなかったさまざまなメリットをもたらしてくれます。はじめに、電子文書管理の目的と、混同されがちな電子化文書との違いについて説明します。
電子文書管理の目的
電子文書管理の目的は、大きく分けると以下の2つです。
- 法律や社会的な責任を負う文書・記録の管理
- 企業活動に必要な文書・記録を有効活用するための管理
企業活動を継続するために法律で保存が義務付けられている文書・記録は多くあります。保存義務のある文書・記録とは別に動的に企業活動で必要な文書・記録もあります。動的に必要な文書・記録の場合、誰でも必要な時にすぐに取り出して利用できる環境を整備することが文書管理の目的の一つで、この検索性の向上が、従業員の労働生産性向上へと直結しているのです。電子文書で適切に管理すれば検索システムにより容易に目当ての文書・記録を見つけられるようになり、保存が義務付けられている文書・記録の保管スペースを確保する必要もなくなります。
電子化文書との違い
電子文書管理を理解するためには、電子文書と電子化文書の違いを明確にする必要があります。
- 電子文書⇒ソフトウェアで作成し保存された文書
- 電子化文書⇒紙の文書・記録をスキャナなどの機器を使い電子データとして保存した文書
WordやExcel、会計ソフトやCADなどを日々の業務で使っている方は多くいるかと思いますが、最初からソフトウェアで作成し保存された文書が電子文書です。電子化文書はもともと紙文書であり、紙文書をスキャナ保存で電子化したものです。ほぼ同じ名称ではあるものの、その性質はまったく違います。後述する法的概念でもそれぞれ性質の違いの把握は非常に重要になってきますので、必ず覚えておきましょう。
電子文書管理を企業が進める理由
電子文書管理を企業が進める理由は、大きく分けると以下の5点です。
- 業務効率化が向上する
- 顧客満足度が向上する
- コストを削減できる
- さまざまなリスクの低減
- 説明責任への対応が可能
ここからは、企業が導入を進める理由についてひとつずつ詳しく解説していきます。
業務効率の向上
電子文書管理を進めることで、業務効率を大幅に向上できます。その理由は、目当ての文書を検索により迅速に見つけられるようになるからです。従来の紙文書の場合、通常業務ですぐに使わない文書は別の保管場所に移管して管理するのが一般的でした。いざ必要となった場合の検索性は、非常に悪いですよね。わざわざ移管場所まで足を運び、自分の目で必要文書がどこにあるのかを探さないといけません。必要文書を探す労力は手間と時間がかかり、非常に効率が悪いと言えます。検索に要する時間も従業員の労働時間は削られていきます。しかし電子文書管理を導入すれば、この手間と時間を省けるのです。保管ルールを明確にしておけばキーワード検索で素早く情報資産を見つけられるため、従来のようにムダにかかっていた労働時間を削減できます。
顧客満足度の向上
電子文書管理を進めることで、顧客満足度の向上が期待できます。前述したように検索システムにより必要情報へのアクセスがスピーディーになります。顧客からのお問い合わせにも素早く対応できるようになり、さらに過去の顧客との会話履歴や取引事例などを企業全体で共有し、常に最適な提案ができるようにもなるのです。
優良顧客の囲い込みは、企業にとってプラスしかありません。迅速でムダのない顧客への対応は口コミなどでも大きなプラス評価になり、対外的な信用度の向上へも直結します。一見するとムダのように感じる顧客とのやり取りログや取引実績なども残しておけば、後の分析と解析で新たな企業価値に変わる可能性もあります。
コストの削減
電子文書管理を進めることで、コストの削減を実現できます。
- 紙代
- 印刷機器代およびメンテナンス費
- 郵送費
- 保管費用
従来の紙文書で必要だったコストを削減できるだけでなく、印刷や郵送業務を管理していた従業員の人件費カットや別部署への移管も可能になります。また、電子文書にすることで紙文書の保管場所を確保する必要性がなくなりますので、快適なオフィス空間の実現と家賃の節約も実現できます。
リスクマネジメント
電子文書管理を進めると、企業が保有する情報資産を守れます。誰がいつ閲覧したかを記録管理できるようになるので、情報漏洩や改竄、紛失などを防げます。さらに、災害時に、オフィスが使用不可になりパソコンが破損した場合はどうえしょう。その場合でも、クラウドなどに電子文書を保存しておくことで被害を最小限に抑えられるのです。企業が保有する情報資産の外部流出は、社会的な信用度を落とすだけでなく、損害賠償請求などに発展してしまうリスクもあります。リスクマネジメントを実現できる電子文書管理は企業活動における重要な施策と言えるでしょう。
説明責任への対応
電子文書管理を進めることで、説明責任への対応も可能にします。企業は、経営者と従業員だけでなく、取引先や株主、消費者、地域社会など、さまざまな関係者と共存して成立しています。多様な利害関係者への説明責任は、企業の重要な役割です。それを十分に満たすためには客観的に納得できる十分な根拠にもとづくデータが必要となります。企業活動で蓄積していく情報資産は説明責任を果たすためにも重要な役割をもちます。利害関係者へ不信感を抱かせないためにも分析と解析は欠かせません。
電子文書をめぐる動き(法的概念)
電子文書をめぐる動きは、法的概念の移り変わりの歴史と言っても過言ではありません。「e-文書法」と「電子帳簿保存法」が施行されたことで、電子文書に対する企業の考え方は大きく変わりました。ここからは、電子文書を扱う上で欠かせない2つの法律について解説していきます。
e-文書法
2005年に施行されたe-文書法は、保管が義務付けられている文書の電子保存を認める法律です。
会社法、法人税法、証券取引法など、企業には数多くの法律で保管が義務付けられている文書や領収書、請求書や帳簿などがあります。従来は紙文書での保管が義務付けられていた文書も電子ファイルによる保存が可能になったことで、電子文書をめぐる企業の動きは大きく変わりました。e-文書法の対象にならない文書についても、後述する電子帳簿保存法が整備されたことで電子保存が可能になります。企業が保有するほぼすべての文書の電子保存を認める法律の制定は、国を挙げて文書の電子化の後押ししている動きであるとも言えます。
電子帳簿保存法
1998年に施行された電子帳簿保存法は2005年のe-文書法施行時に改正され、2016年と2017年にも規制緩和がされました。文書電子化を進める企業の導入を増加させる時代の流れを作ったのです。e-文書法が医療や保険、証券建築に関する保存義務のある法定文書が対象です。
電子帳簿保存法は財務省と国税庁が管轄する法律に関する文書に適用されます。そういう点で、e-文書法と電子帳簿保存法は、適用文書の範囲で大きな違いがあります。2005年の改正において紙で作られた文書のスキャナ保存が認められました。もともとは3万円以上の領収書と契約書が対象だった電子保存の金額設定の撤廃が2016年、スマホやデジカメで撮影された文書も対象になるように規制緩和されたのが2017年です。このようにデジタル化が加速する日本企業の時代の流れに沿うように、電子帳簿保存法の中身も変わり続けております。企業にとって、電子文書化を導入しやすくなってきています。
まとめ
電子文書管理の基礎的な知識、企業の導入目的、法的概念について解説してきましたが、参考になりましたか?
デジタル化が加速する現代社会において、文書を電子化する動きは企業だけでなく国全体で取り組んでいる重要な施策です。目的やメリットを十分に把握し、導入への舵取りは経営層の方が先陣を切って取り掛かりましょう。
電子文書管理を導入したいけど何からはじめればよいかわからないという方は、レコードマネジメント(記録情報管理)を日本でサービス化したパイオニア企業である日本レコードマネジメントにご相談ください。豊富な導入実績がある日本レコードマネジメントは、専門スタッフが企業のあらゆる悩みとニーズに対応し、電子文書管理システムの導入から運用までのすべてを支援します。電子文書管理の導入を進めたいと考えている方は、お気軽にお問い合わせください。