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情報ライフサイクル管理はなぜ必要か?

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2022/05/30
情報ライフサイクル管理はなぜ必要か?

企業や組織にとって第4の経営資源である情報は増大する一方です。ですが実際はそれらは企業活動に役立つ、価値のある情報ばかりではありません。情報の価値は常に一定ではなく、時間によっても変化するものだからです。情報にかけるコストも有限です。社内のITインフラは最適化されていますか?

ITインフラの再構築のコンセプト

ストレージと呼ばれる大容量の記録装置は高速ですが高価ですので、指数関数的に増大する情報を継続的に保管していると、その弊害として追加導入コストはもちろん人的な管理コストなどストレージ・コストが上昇して企業経営を圧迫します。また一方では、ITに多くを依存する現在、情報管理を怠れば、業務の停滞や社会的信用の失墜など、様々なダメージを負う可能性があり、情報基盤への投資を見送ることもできません。

そのため、情報システムのインフラを見直して再構築することで、ストレージシステムやその管理を行う人材などのコスト削減を図る企業が増えてきました。このような状況の中で生まれたコンセプトがILMです。

「ILM(情報ライフサイクル管理)」とは、「Information Lifecycle Management」の略で、企業内に蓄積されている大量の情報を、情報ライフサイクル(「作成」→「処理/活用」→「保存」→「廃棄/アーカイブズ」)において変化する価値や利用頻度、容量に応じて適切なストレージへ移動・配置することにより、効果的な情報活用と効率的なストレージ投資を実現する概念や手法のことです。近年は、各種法規制によるデータの保存、保護、廃棄などの義務化の動きなどもあり、コンプライアンスソリューションとしても注目を集めています。

企業内の情報の本質

企業に蓄積されている情報は、次のように大別することができます。

  • 活用中の情報
  • 活用中ではないが上手に活用すれば、他の業務(例えば新事業や新製品開発、マーケティング戦略など)に活かせる情報
  • 法律で保存が義務付けられた情報やバックアップのように、保存は必要だが活用されることは極めてまれな情報
  • 本来は不要な情報


しかし、大半の企業が全ての情報を同等に扱っているのが実情です。このような状態は、企業のストレージを圧迫するだけでなく、管理を煩雑にして管理コストを上昇させます。また、活用できる情報がストレージに埋もれてしまって検索に時間がかかる上、不要な情報ばかりがヒットする状況になりかねません。

最近、上記3.のカテゴリとして、不正アクセスや機密情報漏えいなどのコンピュータに関する犯罪が生じた際に、証拠隠滅の形跡やデータ改ざんなどの痕跡を見つけて原因を究明するために、電子メールの履歴をメールサーバー側で保存するケースが増え始めています(メールアーカイブ)。こうした情報は、実際に事件が起きなければ活用されることはありませんが、削除できない大事な情報です。

また、法律で保存が義務付けられている財務データなどの情報は、利用されないからといって削除することはできません。法定保存年限が経過して初めて廃棄することが可能となります。さらに、財務データや個人情報などは、機密性や完全性などを確保した保存方法が求められます。情報管理が不適切で個人情報が外部に流出すれば、企業は社会的及び刑事的責任を問われる上に、ビジネスそのものも大きな打撃を受けることになります。

企業に蓄積されている情報には様々なものがあり、その情報の価値と利用頻度に応じた保存方法やコスト削減に向けた解決策が、求められているのです。

情報の価値は変化する

企業内で利用・蓄積されている情報の価値や用途は、時間経過や環境変化などによって常に変わります。企業買収などは、情報の価値が劇的に変化するケースです。

多くの情報は、作成後の一定期間において利用価値が高く、時間の経過とともに利用されなくなり、価値も低下しますが、反比例して容量は大きくなります。一般的に文書を作成した3ヶ月後の同一文書の検索や利用は10%未満といわれ、1年後には1%未満になるといわれています。こういった、殆ど利用されない文書が全て高速かつ高性能のストレージに保存され、リソースを圧迫しているのです。

近年では、このような状況から、保存した文書を活用することを念頭において、事前にストレージすべき文書の整理や仕分けをルール化することなどによる、ストレージの圧迫軽減がILMでは最も大事なことであるといわれています。

具体的なILMの例

一口にストレージといっても、「HDD」「ネットワークストレージ」「リムーバブルメディア」「テープ」など多種多様で、容量、データ転送速度、価格、信頼性、長期保存適性などの面で様々な特性があります。ILMの管理プロセスの具体例としては、次のようなものがあります。

  • 極めて重要で利用頻度も高い情報
    • 高信頼性かつ高性能なストレージ(ディスクアレイなど)で管理。導入/運用コストは高くなるが、価値の高い情報を確実に保護
  • 一般的な業務で活用する情報
    • 中小規模ストレージ(HDDなど)で管理
  • 利用頻度は低いが、容量が多く長期保存が必要な情報(法律で保存が義務付けられた情報、バックアップデータ、訴訟対策の情報、メールアーカイブなど)
    • 容量単価が低いストレージ(磁気テープなど)で管理
  • 不要になった情報
    • 廃棄


上記の例のように、企業が蓄積している情報を、価値と利用性の高いものから低いものへ分類し、その分類に合わせて高速かつ高価なストレージから、情報価値に合ったストレージに再配置します。これにより、ストレージ全体のコストを削減できるだけでなく、実際に管理が必要となる価値の高い情報が明確となり管理者の負担も軽減できます。ILMを実現するためには、ハードウェア環境のストレージシステムに加えて、各種ソフトウェア技術が必要となります。例えば、人間が実際に情報の価値を分類したり再配置したりするのは、容易なことではありません。そこで、情報の分類や再配置には、コンテンツ管理のソフトウェアを利用します。これにより、情報の分類などが自動化され、管理者は意識することなく日々の運用を行うことができます。

情報の属性やそれに対応するストレージの種類、ストレージ間を移動させる際の情報のステータスなどに関するルールは、ユーザーによって異なります。ILMでは導入時に、ユーザーがルールに基づいた運用ポリシーを作成します。ILMは、それに従って、情報の格納やコピー、バックアップ、アーカイブなどを自動的に行い、高速検索のための索引の作成や情報抽出などのコンテンツ管理を行います。

ILM構築の際のポイント

昨今の急激なIT化とITネットワーク利用者の増大により、情報システム上のデータが脅威にさらされる危険性は高まるばかりです。

また、2000年以降に施行された様々な法律において、企業は安全で適切な情報管理や迅速な情報開示を求められています。例えば、個人情報保護法により、個人情報を安全に管理するための措置を講ずることが義務化されました。日本版SOX法(金融商品取引法)においては、不祥事があった場合の事実追跡のために、内部統制の有効性を評価するのに必要な業務の流れや管理の仕組みなどの情報を、厳密に保存することが求められています。

企業にとってコンプライアンスに対応した情報管理は不可欠で、そのためには、「機密性」「完全性」「可用性」を確保しつつ、情報システムを取り巻く様々な脅威から情報資産を保護できるILM構築を検討する必要があります。

さらに、将来の情報量の増加に備えて、長期的な安全と拡張性、新技術への移行性などが可能なストレージ基盤の構築が必要です。企業内の情報は、減ることなく増加し続けるものであり、作り直しのできない情報も多々存在します。そのため、一時的な価格や性能だけではなく、幅広い拡張性、将来性を考慮したILM構築を検討する必要があります。

まとめ

ITインフラの再構築あるいは新規構築で考慮すべき事項を簡単にまとめました。情報ライフサイクル管理は電子データに限らず、あらゆる情報資産に適用されます。本記事も含め詳細についてお知りになりたい場合は、文書管理に関する様々なテーマや課題についてコンサルティングからシステム開発・運用に至るまで一貫したサービスご提供し、450社以上の実績がある日本レコードマネジメントへお気軽にお問い合わせくださいませ。