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大量の電子メールをしっかり管理するには?

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2022/05/30
大量の電子メールをしっかり管理するには?

メールの普及により、我々のビジネス環境は大きく変わりました。昨今、集積した電子メールの持つ証拠としての価値がクローズアップされるようになり、電子メール管理のプライオリティは高まっています。

電子メールがビジネス環境を大きく変えた

電子メールは、官民を問わずあらゆる組織の日常で最も重要なコミュニケーションのツールとなっています。たとえば取引の相手先に対し、仕様書、提案書、見積書、契約書案などがメール添付文書として頻繁に送受信されています。このようにビジネス上の交渉事や契約など、重要な情報がますます電子メールを介してやり取りされることで、電子メールの持つ証拠・記録としての価値がクローズアップされるようになりました。パソコン内で作成した電子文書とともに、今や電子メール管理のプライオリティが高まっており、組織の情報管理上大きなの課題の一つになっています。

電子メールを記録として取り扱うために、紙および電子文書と同様に、作成から受領、保存、再利用のための検索を経て処分に至るまでの適切な管理ルール設定をします。また、電子メールの内容と情報価値により、保存期間を決める必要もあるでしょう。

正式文書として扱われる電子メール

日本では近年、官公庁や企業が情報セキュリティ規則の中で電子メールの使用について、電子メールの取り扱いに特化した「電子メール管理規則」などを制定する例がでてきています。この動向は電子メールがようやく正式な「文書」として扱われるようなってきたことを示しています。

以前から、アメリカの記録管理のセミナーでは、「電子メールメッセージは記録である」というテーマがよく取り上げられていました。これは、アメリカの法廷で電子メールメッセージが証拠として召喚されるケースが起きているためです。特にアメリカの法制度特有の証拠収集制度であるディスカバリーの対象として、電子メールが取り上げられる例が多いのです。そのためアメリカでは既に大部分の組織が「電子メール管理規則」(“E-mail Policy”という)を制定しており、その点で、日米の間には大きな違いが見られましたが、近年では同じような考え方に変わってきています。

日本でも、電子メールの記録が訴訟や公的な検査などにおいて法的な証拠として取り扱われるケースが増えつつあります。なかでも訴訟の場において文書提出命令の対象となるケースが目立っています。では、なぜ電子メールが、このような文書提出命令の対象として狙われるかというと、電子メールは作成者に公式文書という感覚がなく、つい気楽な気持ちで書くために本音が出やすいという特性があるからです。そのため訴訟の原告側が自己に有利な証拠を見つけ出す有力な手段として電子メールがターゲットになっているわけです。その背景には1996年の民事訴訟法改正(施行は1998年)により、文書提出命令が強化されたことがあります。つまり、裁判所の命令により、企業は、自己使用文書、職業秘密文書に該当しない限り、原則全ての文書を法廷に提出しなければならなくなったからです。

関連して思い出されるのは、日本振興銀行のメール削除事件でしょうか。これは、日本振興銀行が金融庁の立入検査の際にサーバー内に保存されていた取引に関する電子メールを意図的に削除したとして、2010年7月、前会長ら経営幹部5名が検査忌避(銀行法違反)容疑で逮捕されたもので、その後、同行は9月に経営破綻し、ペイオフが初めて発動される事態となりました。

電子メールの特性から管理方法を考える

電子メール管理の最大の問題は、電子メールにはあまりにも種々雑多な文書が含まれており、重要なものとそうでないものが混在している点です。メールにはいわゆる“ジャンクメール”といわれる価値のない情報が数多く含まれています。これはメールが電話の代替という性質を持っているために、その場限りの個人的なやり取りがどうしても多くなることによります。

さらには、C.C.メールや添付ファイル、返送メールなどのメール独特の機能が、いたずらに情報量を増やしています。 もう一つの問題は、電子メールが個人管理になりやすいということです。もともとメールは組織内で個人に割り振られたメールアドレスを介して情報のやり取りを行うものですから、個人管理になりやすいのも頷けます。文書が個人管理になると、どうしても組織文書として保存すべきものとそうでないものの区別が付き難くなります。これらのことが電子メールの管理を難しくしているのです。

しかし、電子メールは記録が残るというところに大きな特長があり、そのメッセージは紙や他の電子媒体に“記録された情報”と同じく、あくまで“文書”であるという特性を持っています。ここで、従来の紙文書や電話と違い、電子メールには基本的にどのような特性があるのかという点を、もう少し詳しく整理しておきましょう。

  • 電子メールは、送信先、送信日時、送信内容(本文や添付文書)などが自動的に記録され、意識的に削除しない限り、コンピューター内の記憶装置に保存されます。仮に送信者が削除したとしても相手方(場合によりC.Cメールを含め複数の送信先)に受信記録が残ります。
  • 電子メールでは、「引用返信」という形式により、相手方の文書がそのまま引用された上で新たな文書が作成され送信されることが多いのです。つまり個々のメールだけではなく、送信者と受信者の間でやり取りされたメールの履歴がもれなく記録されることになります。
  • 上記から分かるように電子メールの最大の特徴はその記録性と証拠性にあります。従って訴訟の場合はいうに及ばず、組織間の様々な紛争や主張の食違いが生じた場合に、自己の正当性を立証する証拠として利用価値が高いのです。しかしながら、この点は相手側から見ても同様なので、訴訟対策を含めたリスク管理の観点から、注意が必要です。



管理規則作成のポイント

  • 電子メールの内容によって保存対象メールを決める。
  • 組織の公式記録として残すべき電子メールの類型を明確にする。
  • 保存すべき電子メールの類型を分類体系として標準化する。
  • 分類体系を標準化する場合には、用語の統一を行い、他部門からでも検索ができるようにする。
  • 電子メールの類型によって保存期間を明確にする。
  • 本文のみでなく、ヘッダー部分(日付、差出人、相手先、主題など)及び添付ファイルを含めて保存する。
  • 保存すべき重要な電子メールは、個人のパソコンではなく、組織共用のファイルサーバーで保存する。
  • 電子メール管理規則の作成は、各部門からのプロジェクトチームによる。(例えばIT、法務、総務、財務などの各部門)
  • 電子メール管理規則ができたら、職員に対する教育を行い、徹底を図る。


管理規則の分類体系と保存期間

次に、これらの留意点を考慮に入れながら、電子メール管理規則を作成するにはどのようにすればよいかを考えてみましょう。まず、それぞれの企業や組織における電子メールの分類体系を作成しなければなりません。そして、その分類カテゴリごとに保存期間の設定が必要です。ただし、これらのルールは企業や組織毎の方針とニーズに基づいて作成すれば良く、こうでなければならないというものではありません。以下、分類体系と保存期間ルールの考え方の一例を示します。

長期的な保存価値:業務の証拠として重要な組織文書 保存期間:5年以上

このカテゴリは業務の証拠として重要な組織文書です。主として外部とのやり取りで重要な文書、あるいは内部でも他部門との正式なやり取りなどの重要な文書が含まれます。これらはそれぞれ文書ごとの重要度に応じて保存期間を決め、専用の共用サーバーで保存します。通常、5年またはそれ以上となります。既存の文書保存ルール(紙文書及びその他の電子文書)があるならば、保存期間の決定は当然、これらと整合性を取らねばなりません。

短期的な保存価値:比較的重要度の低い業務の組織文書 保存期間:1~3年

このカテゴリは、比較的重要度の低い業務の組織文書です。業務に関したやり取りではあるが重要度の低い組織文書で、定型的な業務文書などが含まれます。例えば簡単な部門内の打合せ、外部からの問い合わせ業務や会議の召集通知などが含まれます。C.C.メールは殆どがこのカテゴリに入りますので、これらは1~3年の保存期間を設定し、同じく専用の共用サーバーで保存します。

一時的な保存価値:保存を要する個人的な業務文書 保存期間:90日

このカテゴリは、保存を要する個人的な業務文書です。すなわち組織文書ではない個人的な業務文書で、参照のために一時的な保存を要する文書です。例えば問い合せメール、確認メール、あるいは情報提供のためのメールです。これらは90日間の保存とし、クライアントPCで保存します。 1.2.3.の3つのカテゴリ以外の電子メールは、用済み後消去か、明らかに関係のないメールとして消去します。

まとめ

電子メール管理のアウトラインについて簡単にまとめましたが、参考になりましたでしょうか。電子メールにはあまりにも種々雑多な文書が含まれており、重要なものとそうでないものが混在している点や個人管理になりやすい点が挙げられますが、重要な内容を含む電子メールについては、組織のコンプライアンスやリスクマネジメントを考慮して、紙文書や電子文書と同様に適正な管理が必要な時代です。

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