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電子商取引と電子文書管理

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2022/05/30
電子商取引と電子文書管理

電子商取引(electronic commerce 、略称:EC)と聞くとアマゾンや楽天といった、通販サイトをイメージされる方が多いのではないでしょうか。しかし、日本に限って言えば意外にも、それらのECサイトに代表される個人向けサービスの市場規模は、みなさんが考えるほど大きくはないようです。

電子商取引は3つに分類される

経済産業省が2021年7月に発表した2020年度の市場調査よれば、電子商取引全体の市場規模は推計356.2兆円(以降金額は推計)になっています。そのなかで最も比率の高いのは企業間の電子商取引で、その市場規模は334.9兆円にも上っています。では、冒頭に申し上げたアマゾンや楽天のようなECサイトに代表される、企業が消費者に物販やサービスを提供する分野の市場規模はどの程度なのかといえば19.3兆円とのことです。また、ヤフーオークションやメルカリのような消費者同士の取引のための電子取引もありますが、市場規模は2兆円です。

この数字によれば企業間の取引金額が圧倒的に高いようです。それは今回取り上げた統計が“広義の電子商取引”を採用しており、企業間取引にはVANや専用回線など、インターネットを介さないコンピュータネットワークを介した取引も含まれるためです。消費者向けのサービスとは異なり、企業間においてはまだプライベートネットワーク経由の取引が主流で、インターネットを介した取引はそれほど多くはないようです。

上記の統計情報からも読み取れるように、電子商取引は、“企業対企業”、“企業対個人”、“個人対個人”の3つ大別されます。簡単にまとめると以下のようになります。

B to B(B2B):企業間取引
企業向けのモノやサービスを提供する企業と、それを利用する企業間での取引です。

B to C(B2C):企業対個人取引
ホテルの予約、証券取引からパソコン・家電製品などの物販やコンテンツサービスまで、様々な取引が行われていますが、最近では書籍や衣料品など趣味関連雑貨のウエイトが増えています。

C to C(C2C) 個人間取引
オークションサイトに代表される、個人が出品したものを個人が購入するサービスが該当します。

日本では数字だけ見ても電子商取引でのB to Cの割合が低いのは、保守的な企業風土で、オンライン化に対応できていない企業も多い点、食品業界など市場規模の大きい分野でEC化率が進んでいない点、現金決済を主流とする、クレジットカードを使うことに抵抗のあるシニア層が一定数いる点などが挙げられますが、昨今、コロナ禍の巣ごもり需要で、EC化の流れは加速しつつあります。

B to Cの世界市場に目を転じると第1位の中国が抜きんでており、次いでアメリカが第2位、第3位にイギリス、第4位に日本と続きます。

では次になぜこれほど電子商取引が世界的に盛んになったのかについてお話したいと思います。

国連が電子商取引に影響を与えた!

1996年、国連の国際商取引法委員会は「電子商取引のモデル法」を制定しました。この法律モデルは、世界的に各国の電子商取引に関する法制度の確立に大きな影響を与えました。当時の国際的な商取引の場では、電子メールやEDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)など、当時としては目新しい通信手段の利用が急速に増えていました。また、インターネットなどの情報技術も進展している中で、世界に向けて法律モデルを提示することで、重要情報がペーパーレスメッセージの形式でもやり取りが妨げられず、それらの法的効力にも不安が生じることがない制度が必要だったのです。

国連の「電子商取引のモデル法」の条文を見てみると、電子文書を管理する上での諸問題が端的に記述されており、とても示唆に富む内容になっています。

データメッセージの法的承認

「情報は、それがデータメッセージの形式であるという理由で法的効力、正当性、実効性を否定されてはならない」(第5条)

データメッセージ、すなわち電子文書の法的効力は基本的に紙文書と同等でなければならないということを明確にした点で意義があります。電子商取引のみならず、訴訟における証拠能力にも関連する問題です。

書面

「法律が情報は書面でと要求している場合でも、その情報が後の参照利用に際し検索可能ならば、データメッセージはこの要求を満足する」(第6条)

電子文書の見読性に関わる問題です。電子文書はもともとMachine readableであり、パソコンなどの画面に表示するか、紙にプリントアウトしない限り読めないという特性があります。従って、必要な電子文書が必要な時に何時でも検索でき、参照できる状況になっていないといけないのです。また、インデックスの完備など、検索の容易性も要求されます。

署名

「法律が個人の署名を要求している場合でも、その個人を識別でき、データメッセージに含まれている情報をその個人が承認していることを示す方法があるなら、データメッセージはこの要求を満足する。」(第7条)

電子文書の作成者と称している人間が本当にその文書を作成したかどうかを、どのようにして証明するかという問題です。これは電子文書の真正性の問題であり、これを解決する方策が、まさに電子署名なのです。

原本

「法律が、情報をオリジナルの形式で提出、または保有されるよう要求する場合でも、情報がデータメッセージとして、最初に作成された時の形式のままであるという完全性につき信頼できる保証があるなら、データメッセージはこの要求を満足する」「完全性を評価する基準は、その情報が完成されており、変更されずに残っているかどうか、また通常の伝達、保存、閲覧の課程で何らかの追加・修正が加えられていないかどうかでなければならない」(第8条)

電子文書は追加、修正、削除などの変更が容易にできるというメリットがありますが、同時にこれは改ざんなどの不正な変更が跡形もなくできるという点でデメリットになります。従って、電子文書の完全性、つまり文書が完成しており、後で修正変更されていないかが重要であり、本条はそのための評価基準を明らかにしています。

電子メッセージの法的証拠能力

「いかなる訴訟手続においても、それがデータメッセージであるという理由だけで、データメッセージの法的証拠能力を否定するような証拠規則の適用は行われてはならない」「データメッセージ形式の情報にも正当な証拠としての重要性が与えられるべきである。データメッセージの証拠としての重要性を評価するには、そのデータメッセージの作成、保存、伝達の方法に関する信頼性、並びに情報の完全性維持の方法及び作成者を識別する方法に関する信頼性に対して、考慮が払われるべきである」(第9条)

訴訟における電子文書の証拠能力を基本的に認めており、その評価基準を明らかにしています。

データメッセージの保有

「法律がある文書、記録又は情報の保有を要求する場合に、データメッセージが次の条件を満たすならば、その要求は満足される。

  • データメッセージに含まれる情報が後の参照利用に際し検索可能なこと
  • そのデータメッセージが作成、送付、受領されたフォーマットで保有されているか、またはその情報が実際に再現、提示可能なフォーマットに保有されていること
  • どのような情報であれ、そのデータメッセージの発信元、送付先、送受信の日時などが識別できるような方法で保有されていること」(第10条)

本条は電子文書の利用性、つまり後の参照利用のために必要な条件を明らかにしており、そのための文書の属性情報(メタデータ)の重要性を指摘しています。

以上、国連の「電子商取引のモデル法」から、単に電子商取引のみでなく、一般的な電子文書の管理にも共通する重要項目を拾い出してみましたが、参考になる点が多いと思われます。

見直された日本国内の関連法制度

インターネット上での電子商取引を促進し、それらが企業の取引活動の基盤として十分に機能するためには、従来のインターネット上の取引を前提にしていない各種法制度の見直しを行う必要がありました。そこで政府は2000年11月に「IT書面一括法」を成立させ、電子商取引の阻害要因の一つになっている書面の交付あるいは書面による手続きを義務付けている規制を改正、従来の手続きに加え、電子的手段によって行えるようにしました。

具体的には、従来は契約などに際し取引条件などを記載した“紙”による書面の交付を義務付けていたものを、従来の書面による手続きに加え、顧客が同意した場合に限って、電子メールなどによっても行えるように制度を改正したのです。その他、2001年1月には、インターネットなどの高度情報通信ネットワークを活用し、創造的で活力ある社会を実現するための基本的なインフラ整備を目的とした「IT基本法」が、また同年4月には電子署名が手書き署名や押印と同等に通用する法的基盤の確立を目的とした「電子署名及び認証業務に関する法律」(電子署名法)が施行されています。

インターネットの活用により電子商取引が様々な分野で普及していますが、一方では情報通信ネットワークの安全性・信頼性に対して不安を持つ利用者が増大しつつあり、これらを解消する必要性が出てきました。ネットワーク上の情報セキュリティについては、「なりすまし」などの不正アクセス問題、コンピューターウイルスの問題など様々なリスクが指摘されており、最近特に脚光を浴びているのが個人情報保護に関する問題です。

中でも個人情報の漏えい問題は深刻な社会問題となっており、社会経済活動のネットワーク化に伴う今後の大きな課題の一つになっています。個人情報保護に関する法律としては、これまで「行政機関の保有する電子計算機に係る個人情報の保護に関する法律」(1988年施行)がありましたが、これは対象がコンピューター情報に限定されている上、民間の保有する個人情報が対象となっていないなどの問題がありました。そこで政府は本格的な個人情報保護法の制定に向けて検討を進め、2003年5月に「個人情報保護関係5法」を制定するに至ったのです。

まとめ

電子商取引とどのようなもので、それを支える法的根拠の土台となった国連のモデル法などについて簡単に説明してきましたが、参考になりましたか?

電子商取引の市場規模が拡大すればするほど、電子データとしての取引関連書類も増大の一途をたどるでしょう。電子文書の安全性や信頼性に細心の注意を払いながら適切な運用管理をしてゆくことが求めらています。 電子文書管理について、詳しくお知りになりたい方は、450社以上のコンサルティング実績がある日本レコードマネジメントへお気軽にお問い合わせくださいませ。

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