世界の電子文書の状況
海外では電子文書に対する取り組みははどうなっているのでしょうか? 調べてみました。
電子文書が持つ課題とは…
あらゆる国のあらゆる場所、あらゆる分野で文書の電子化が進展しています。20世紀半ばにパソコンが発明されて以降、小型化・低価格化が進み、以降、大多数の人がパソコンで文書を作成しています。今やパソコンやスマートフォン、タブレットなどで、単に文書を作成するだけではなく、計算したり、静止画・動画のコンテンツを製作したり、ネットワークを通じて通信を行ったりでき、それらをデータとして保存し、活用するのが当たり前になっています。
しかし、国家や企業などの組織では電子文書の取り扱いについて、まだいくつかの問題があります。作成はパソコンで電子的に行っても、依然として保存や活用は紙でというやり方から抜け出せていないのが実情です。その原因は2つあります。まず1点目として、電子文書の欠点がはっきりしてきたことが挙げられます。実は電子文書には原本性の保証、長期保存という2つ課題があり、その点では現状、紙文書に優位性があります。2点目は、文書の作成から活用、保存、最終的には廃棄に至る、ライフサイクル管理という点で、紙文書の扱いと異なるノウハウや手法が必要にもかかわらず、まだ電子文書には確たる方法がないためです。
電子文書に関する海外の動向
海外では文書の電子化を加速させている国々があります。例えば、アメリカでは、2019年までに、連邦機関は電子的に作成された文書は紙に打ち出すのではなく、全て電子フォーマットのまま保存・保管するとしています。国立公文書記録管理局(NARA:National Archives and Records Administration)が10年掛かりで進めてきた電子記録アーカイブズ(ERA:Electronic Records Archives)システムの運用も、2012年から始まっています。このERAは、今後ハード、ソフトがどのように変わろうとも、未来永劫に電子記録が読み取れるようにするシステムで、各省庁からNARAへの記録の移管を電子的に行うだけではなく、同時に紙やフィルムを含めた全ての記録のライフサイクル管理プロセスへの支援も実施しています。
イギリスでは行政文書の電子化目標として、電子公文書として保存するか否かについて各行政機関の判断に委ねるが、もとの文書が電子的に作成された場合には、電子的に保存されることが望ましい、としています。文書管理に関しては2000年代以降に、多くの機関が電子文書・記録管理システム(EDRMS)を採り入れた管理を始めています。ただし、全省庁にて統一されたものではないようです。イギリス国立公文書館では2007年にデジタル継続性プロジェクトを立ち上げています。電子文書が時間の経過や変化を経て情報が利用不能になるリスクを考慮し、ガイダンスの提示や各種ツールの開発等を行っています。
また、カナダでは国立図書館・公文書館(LAC:Library and Archives Canada)が、各省庁からLACへの公文書の移管は、2017年以降、電子記録のみとする方針を打ち出しています。
日本の電子文書の状況は
海外の先進国では電子文書に関する先進的な取り組みが始まっていますが、日本においては、まだ現状はそこまで進んでいません。なぜならば2011年、国においてようやく公文書管理法が施行され、紙ベースの基本的な公文書管理の仕組みをガイドラインとして定着させ始めたばかりだったからです。近年、国は公文書の電子文書化による行政事務の効率化や国民の生活環境改善への寄与などを目的とする施策として、国の行政の電子文書化を加速しており、民間レベルでも、その対応が急がれる状況になっています。しかし、電子文書には電子文書特有の課題があります。公文書管理法の基になった有識者会議の最終報告書「時を貫く記録としての公文書管理の在り方」(2008年11月)では、次のような点が問題点として取り上げられています。
- 多くの文書が電子的に作成されているにもかかわらず、保存は依然として紙媒体中心に行われているため、ITを活用した業務の効率化が十分図られていない。
- 電子的に作成された文書について、媒体、フォーマット、メタデータ等に関する長期保存のルールがなく、電子文書のまま国立公文書館への移管・保存が行われていない。
- 電子文書の管理が属人的になりがちで必要な情報共有が進みにくい。
- 現在の文書管理システムは府省毎に仕様が異なり利用が低調、文書管理システムと個別業務システムとの連携が不十分、霞ヶ関WANにおける電子文書交換システムの使い勝手が悪いなど、文書の保存、流通、利用の各場面において、電子文書の利便性、有用性が生かされていない。
そして、解決の方向性は次のように整理されています。
- 電子的に作成された文書が、各府省における保存・利用から国立公文書館へ移管され、長期的に保存・利用されるまでのライフサイクルを通じて、一貫して電子的に処理できるようにする。
- 組織内の情報共有を進めるとともに、適正な情報管理を行うため、電子文書の管理・取扱ルールを確立・徹底するようにする。
- 文書管理及びその他の業務を通じたITの活用(文書管理システムと個別業務システムの連携など)により、業務を一貫して電子的に処理できるようにする。
まとめ
電子文書に関するの取り組みは、世界主要国でもまちまちのようです。国内では2021年に政府にデジタル庁が発足してITの活用等により、一般の国民や海外からの利用を強力に推進していこうとしています。ここで挙げられた問題点や解決の方向性は国の機関の例ですが、民間企業などにおいても共通する課題といえるでしょう。
電子文書管理に関しての課題解決や詳細についてお知りになりたい場合は、文書管理に関する様々なテーマや課題についてコンサルティングからシステム開発・運用に至るまで一貫したサービスご提供し、450社以上の実績がある日本レコードマネジメントへお気軽にお問い合わせくださいませ。