文書管理人材の育成に貢献するJARMA
日本記録情報管理振興協会(以下、JARMAと記述)は、教育機関や関連諸団体と連携し、文書管理(レコードマネジメント)専門職に関する人材育成を行っています。
JARMAの設立
わが国では2008年、公文書管理の在り方等に関する有識者会議が開催されました。
この公文書管理の在り方等に関する有識者会議は、国の機関における文書の作成から国立公文書館への移管、廃棄までを視野に入れた文書管理の今後の在り方及び国立公文書館制度の拡充等について必要な検討を行うため、公文書管理担当大臣の下に、開催されました。
その最終報告「『時を貫く記録としての公文書管理の在り方』~今、国家事業として取り組む~」の「制度設計にあたっての基本的な考え方 」で「適切な研修、人材育成等により、文書の作成・管理のレベルアップがなされる仕組みを作る。」と報告されました。
このような文書管理に関する人材育成が必要とされる時代背景のもと、「文書管理 [1]に関する人材育成を行い、関連諸団体との緊密な連携のもとに、わが国の文書管理の振興に寄与すること」を目的とし、2008年7月にレコードマネジメント協会が設立されました。
その後、2010年4月の一般社団法人化に伴い、日本記録情報管理振興協会(Japan Records Management Association, JARMA)と名称変更を行い、現在に至ります。
[1] 国際的にはレコードマネジメント(記録管理)と言われている
JARMAの主な事業
JARMAの主な事業には、記録情報管理士資格認定試験の実施と大学への講師派遣の2つがあります。知識・スキルを評価する資格認定試験と、それらに合格できる人材を育成するための講座への講師派遣という2つのアプローチで、協会の目的を達成することを目指しています。以下に、それぞれの内容について詳述します。
記録情報管理士資格認定試験の実施
記録情報管理士資格認定試験は、文書管理専門職の能力を認定する検定制度で2009年のITセクレタリー検定3級からスタートし、2010年から2018年までは、記録情報管理者検定の名称で、2019年からは記録情報管理士検定の名称で実施しています。
現在の検定試験は、1級から3級でレベルが分かれています。
3級では、文書と情報の基礎的な知識や文書管理の基本的知識、文書管理実務で知っておくべき知識、文書管理の目的や歴史についてなど、初歩的な文書管理について知っておくべき知識を問う内容で、記録情報管理士検定標準テキストの上巻より出題されます。
2級では、上記3級の出題範囲に加えて電子文書、アーカイブズ、機密情報の管理、情報検索、文書管理に影響を与える法的要素や標準類についてなど、文書管理業務に関する基礎知識や実践に役立てるためのスキルを問う内容で、記録情報管理士検定標準テキストの上下巻より出題されます。
また、最も専門的な知識を必要とする1級では、文書管理業務を理解しているだけでなく、自ら記録管理プロジェクトの中心となり推進実行できる程度の関連分野の知識スキルを問う内容で、記録情報管理士検定標準テキスト上下巻の他に、関連事項の知識や自身の意見、 主張とその理由を論理的に述べる能力が求められます。
大学への講師派遣
大学への講師派遣は、関連諸団体と連携を取り派遣を行っています。派遣先に、日本女子大学、駿河台大学、別府大学があります。
日本女子大学
日本女子大学は、女子教育のパイオニアであり、2007年に大学初のリカレント教育として、社会人女性の「新たな学び」と「再就職支援」の2つを軸としたプログラム「リカレント教育課程」を開設した大学です。
日本女子大学リカレント教育課程は、2015年に文部科学省の職業実践力育成プログラム(BP)に認定されました。この職業実践力育成プログラム(BP)は、「プログラムの受講を通じて社会人の職業に必要な能力の向上を図る機会を拡大」することを目的としており、英語スキル(リーディング、会話、ビジネス対応)、ITスキル、社会保険法・労働法知識、会計・簿記スキル、内部監査知識、記録情報管理士知識、消費生活アドバイザー知識等の知識、技術、技能を習得できます。
このリカレント教育課程(再就職のためのキャリアアップコース)のカリキュラムに、「記録管理概論(記録情報管理士準備講座3級対策)」、及び「電子記録管理論(記録情報管理士準備講座2級対策)」の科目があり、担当講師の派遣を行っています。
駿河台大学
駿河台大学は建学の精神である「愛情教育」の理念の下に、学生一人ひとりの個性を尊重し、その能力を最大限に伸ばしていく教育を行うとともに、埼玉県飯能市の緑豊かな環境の中、勉学意欲に応えられるキャンパスが整備された大学です。
この駿河台大学で2009年に誕生したのが、メディア情報学部であり、さまざまなメディアを対象とした情報の創造、デザインと管理を総合的に学べる学部です。このメディア情報学部のカリキュラムに、「公文書管理論」、「記録管理論」、「電子文書と記録管理」、「記録情報演習」、「記録情報実習」の科目があり、担当講師の派遣を行っています。
別府大学
別府大学は、豊州女学校を開設した1908年から始まる100年以上の歴史がある学校法人です。別府大学は1950年、別府女子大学として創設され1954年に別府大学と改称し、男女共学となりました。
この別府大学の文学部史学・文化財学科は、西日本では、数少ない歴史学系の文学部史学科として1963年に創設されました。さらに、21世紀の複雑な社会ニーズに応じて、歴史・考古・民俗・環境・保存科学など幅広く学べるよう、2009年に史学・文化財学科として再出発した学科です。この学科にて、文書館専門職(アーキビスト)養成課程を2004年に設置しています。この課程のカリキュラムに「レコードマネジメント論Ⅰ」、及び「レコードマネジメント論Ⅱ」があり、担当講師の派遣を行っています。
まとめ
本記事ではJARMAが推進している人材育成事業についてご紹介しました。
記録情報管理士は、その知識・専門能力で支援する、いわば「文書・記録情報管理のコンシェルジュ」の役割を果たします。文書管理システム及びその運用、情報倫理、情報セキュリティに明るく、優れたコミュニケーションスキルとITスキルを活かし、部門スタッフ/プロジェクト秘書として部門業務の問題解決を支援するのがミッションです。また記録情報管理士は、一般的な事務部門で必要な情報管理の基本を身につけていますので、業種・業務を問わず優れた事務系スタッフとしても活躍が期待されます。
記録情報管理士、及び記録情報管理士検定試験の詳細についてお知りになりたい場合はJARMA Webサイトをご覧くだされば幸いです。
参考文献:
(一社)日本記録情報管理振興協会 石橋 慶憲. JARMAの事業-文書管理人材育成により、わが国の文書管理に貢献する-, RIM Journal (Records and Infomation Management Journal) 第50号, 2022年4月1日, P.43-P.44.