公文書の移管を解説!「特定歴史公文書等」には永久保存の義務付けも

国の文書(公文書)も文書のライフサイクル(作成/受領、処理/活用、再利用のための保存、処分)に沿って管理されます。文書のライフサイクルの「処分」は、あらかじめ設定していた保存期間が満了した際のプロセスで、アーカイブズへの移管、廃棄、保存期間の延長の3つから選択します。公文書の場合は法律に従い、アーカイブズへの移管、廃棄、保存期間の延長が決められます。アーカイブズへの移管の場合は、国立公文書館に移管されます。公文書の移管について詳しく解説します。
移管の義務付け
公文書管理法の制定によるアーカイブズ関連の一番大きな変化は、現用の文書管理と非現用の文書管理が一元化され、国立公文書館等への移管が義務付けられたことです(公文書管理法第8条1項)。そして国立公文書館へ移管された歴史公文書等は、新しく「特定歴史公文書等」と呼ばれるようになりました。これらの特定歴史公文書等は、基本的に永久保存が義務付けられました(同法第15条1項)。
それまでは、現用文書の管理は総務省、非現用のアーカイブズは内閣府と、管轄が分かれていたうえに、文書管理を規定した法律は情報公開法しかなく、それも対象が現用文書に限られていたために、非現用である歴史公文書等の移管についての規定はありませんでした。また、アーカイブズに関する法律としては、「公文書館法」と「国立公文書館法」がありましたが、歴史公文書等の移管は義務付けられていませんでした。
「国立公文書館法」では、たとえ国立公文書館が歴史公文書等として保存の必要性を認めたとしても、各省庁と国立公文書館の間で合意が成立しない限り「移管」ができない仕組みになっていました(国立公文書館法旧第15条2項)。そのため、仮にアーカイブズの専門家として国立公文書館が移管を要求したとしても、各省庁が拒否すればそれまでだったのです。公文書管理法の制定にともない、従来の国立公文書館法第15条は削除されました。
国立公文書館等への移管
行政文書ファイル等については、保存期間が満了する前のできる限り早い時期に、保存期間満了時の措置(移管あるいは廃棄)を定めなければならないとされました。この仕組みを「レコードスケジュール」といいます。保存期間が満了した行政文書ファイル等については、事前に定められたレコードスケジュールに従って、国立公文書館等に移管するか、あるいは廃棄することが義務付けられました。「できる限り早い時期」は相対的なものなので、各行政機関によって異なります。
廃棄については内閣総理大臣の同意が必要とされ、同意が得られない場合は、新たに保存期間及び保存期間の満了する日を設定することとされました。また、特に保存の必要があると判断した場合には、内閣総理大臣は、当該行政文書ファイル等を保有する行政機関の長に対して、廃棄の措置をとらないように求めることができるとされました(公文書管理法8条2項、4項)。
一方、公文書管理法の制定にともない、国立公文書館法も改正され、国立公文書館の役割も拡大されました。これまでは非現用文書に限定されていた役割が、現用文書にまで及ぶようになったのです。具体的には、レコードスケジュールで保存期間満了後に移管の措置が定められた行政文書(現用文書)については、保存期間満了前であっても行政機関からの委託を受けて、国立公文書館で保存ができると定められました(国立公文書館法第11条1項2号)。
さらに、国立公文書館は、レコードスケジュールで保存期間満了後の措置(移管あるいは廃棄)が定められていない行政文書(現用文書)にあっても、行政機関からの委託を受けて、保存期間満了前に他の業務の遂行に支障のない範囲内で保存ができると定められました(同法第11条3項)。これら現用文書の保存に関する定めは、国立公文書館が中間書庫業務を行う根拠となるものです。
特定歴史公文書等の移管を受けた国立公文書館等には、それらの永久保存が義務付けられました。ただし、保存している特定歴史公文書等が歴史資料として重要でなくなったと認める場合には、内閣総理大臣の同意を得た上で廃棄することができると定められています。
歴史公文書等の移管基準
国立公文書館へ移管すべき資料の具体的な基準については、「行政文書の管理に関するガイドライン」に「保存期間満了時の措置の設定基準」が定められています。それによれば、以下の1~4のいずれかに該当する文書は「歴史資料として重要な公文書その他の文書」(歴史公文書等)に当たり、保存期間満了後には国立公文書館等に移管するものとされています。
- 国の機関及び独立行政法人等の組織及び機能並びに政策の検討過程、決定、実施及び実績に関する重要な情報が記録された文書
- 国民の権利及び義務に関する重要な情報が記録された文書
- 国民を取り巻く社会環境、自然環境等に関する重要な情報が記録された文書
- 国の歴史、文化、学術、事件等に関する重要な情報が記録された文書
【参考】内閣府:行政文書の管理に関するガイドライン(PDFファイル)
まとめ
本記事では、公文書の移管について解説しました。
公文書管理は、過去には公文書は現用文書と非現用文書で管轄がわかれていたり、非現用文書である歴史公文書の扱いについて規定がなかったりあいまいな運用でしたが、近年各法律が整備され、中には内閣総理大臣の同意が必要なものもあり、公文書管理の扱いが大きく変化してきたのがわかります。
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