文書分類基準とは?その考え方を詳しく解説!
文書管理とは、文書の作成(取得)から、活用、再利用のための保存を経て、アーカイブズへの移管か廃棄かを選択する処分のプロセスまでのライフサイクル管理を効率的・効果的に行うことを言います。
このようなライフサイクル管理を適切に行うための2大ルールとして、文書の分類基準と保存期間が重要です。
この記事では、文書の分類基準について、詳しく解説します。
文書分類基準とは
文書分類基準とは、文書の利活用を促進するために、文書の検索性を向上させるための仕組みです。紙文書だけでなく、電子文書にも効果的です。具体的には、組織が保有する文書を、文書の内容や形式、または文書の種類などの共通する項目で集め、系統的に仕分けしたものをいいます。一般的には、大・中・小の3階層のツリー構造で体系化します。
文書分類基準は、文書を組織的に有効活用することを目的としているので、個人単位ではなく、部や課といった文書の保存単位で作成します。場合によっては、組織共通の全社的または全庁的な分類基準を作成することもあります。
ファイリングシステムの分類基準
ファイリングシステム(作成済みの文書を必要に応じて素早く取り出せるように整理する仕組み)では、これまで伝統的に次の2つの方式で分類基準を作成してきました。それが「ツミアゲ方式」と「ワリツケ方式」です 。
ツミアゲ方式
ツミアゲ方式とは、実際に保有している文書の現物を、内容や形式、種類によりグループ分けして分類する方式です。文書量なども考慮しながら分類していくので、現実に即した分類ができると言われています。文書保存単位(部・課)ごとに、部門の担当者が分類を作成する場合によく使われています。関連性の深い文書をまとめて文書の類型を作り、小分類→中分類→大分類という具合に、下位からから上位へと積み上げていきます。実際のファイリングでは、個別フォルダ→第2ガイド→第1ガイドという順で分類していきます。この方式のメリットは、文書の現物をもとに分類するので、各課の実態に即した分類ができる点、手直しがしやすい点などが挙げられます。
ワリツケ方式
ワリツケ方式とは、全体の業務のバランスを見ながら業務区分や文書種類を基に理論的に分類体系を作る方式です。ツミアゲ方式とは正反対の考え方になります。文書主管部門が、全組織的に共通の文書分類基準を作成する時に使用される手法で、大分類→中分類→小分類という具合に、上位から下位へと設定していきます。実際のファイリングでは、第1ガイド→第2ガイド→個別フォルダという具合に、上位から下位へと分類を決めていきます。ワリツケ方式は、分類が硬直的になりやすく柔軟に変えることができないため、実際には使いにくいと言われています。
従来のファイリングシステムはどの方式を採用していたか
これまでファイリングシステムでは、基本的にツミアゲ方式で分類体系を作成し、全組織的な文書(共通文書)のみワリツケ方式で補うのが良いとされてきました。その理由は、部・課などの保存単位ごとに分類体系を作るのであれば、一番現状を知っているその部門の担当者が作成するツミアゲ方式が良いというものです。
ISO15489の分類基準
ISO15489の分類基準の考え方
記録管理の国際標準であるISO15489の分類基準の考え方は、業務に基づく「業務分類」という方式です。これは、部門別の「組織分類」でも、文書の現物そのものをグループ化して行う「ツミアゲ方式分類」でもなく、文書の発生源である業務活動そのものの分析に基づいています。文書はそれぞれの組織の業務活動から発生するものなので、「業務分類」という考え方は理にかなっています。
2016年に改訂されたISO15489では、「業務の分類体系は、記録を記録作成のコンテクストへ結び付けるツールである。記録の要求事項を業務の分類体系に結び付けることにより、記録の適切な管理プロセスが実行できる」と分類体系の役割を述べています。さらに、ISO15489(2016年)では、「評価」の概念を設けており、「評価によって、業務のコンテクストを理解することが、記録により満足される業務の証拠としての要求事項を明確にすることに繋がる」と述べられています。
そのため、分類体系は、組織の業務が反映され、組織の業務活動の評価、分析に基づいていることが重要になります。そうした結果、分類体系は様々な文書管理のプロセスを支援するのに活用できるといえます。
「業務分類」により業務間の関連・つながりが分かることから、単に個々の文書をバラバラに使用するのではなく、それぞれの文書間の関連性、つまり文書のコンテクスト(文脈)を理解しながら文書を活用することができ、より高度な情報活用が可能になります。また、分類体系は組織内で同じ情報を共有する場合に、部門を超えてコミュニケーションの一貫性と統一性をもたらし、組織内の情報共有化を促進する上でも効果があります。
分類基準は階層構造を想定しています。一般から特定へ、上位の機能レベルから特定の処理業務レベルへと階層を構成します。このような分類体系は固定的なものではなく、業務ニーズの変化に応じ、常に最新のものに修正する必要があります。例えば、部・課という文書の保存単位で分類基準を作成したとき、組織改編や業務の見直しが発生した場合は、都度分類基準を見直し、最新の状態にします。
ISO15489の分類基準作成の留意点
ISO15489では、分類基準作成にあたり下記の留意点を反映していることが望ましいとされています。
- 分類基準は、組織各部門の名称ではなく、業務の機能と活動から生まれる用語を使用する。
- 分類基準はそれぞれの組織に特化したものであり、相互に関係ある機能として同じ情報を共有するため、組織の各部門に通ずる一貫性があり、かつ標準的な通信方法を提供するものである。
- 分類基準は階層的なものであり、最も一般的な概念から特定のものへと動く。すなわち高レベルの機能から具体的な業務処理へという具合である。(例:財務-監査-外部監査)。
- 分類基準は組織としての使い方を反映した明確な用語で構成されている。
- 分類基準は全ての業務機能と活動が文書化されて含まれるよう、十分なグルーピングとサブグルーピングで構成される。
- 分類基準は個別のグルーピングで構成される。
- 分類基準はレコードマネージャーと記録の作成者との連携により工夫される。
- 分類基準は変化する業務のニーズを反映し、また仕組みが変更され、組織の機能や活動の変化を反映することを確認しながら維持される。
まとめ
本記事では、ライフサイクル管理のための文書分類基準について解説しました。従来のファイリングシステムでの分類基準とは異なり、ISO15489では、分類基準は常に変化し最新化されるものであることがわかります。
日本レコードマネジメントでは、文書管理のコンサルティングを行っています。お客様の業務に適合する分類基準策定をサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。