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特定秘密保護法の課題点とは?

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2024/01/25
特定秘密保護法の課題点とは?
特定秘密保護法は、外交・防衛・スパイ防止・テロ活動防止の4つの分野において、日本に安全保障に支障をきたす恐れのある情報を「特定秘密」とすることを目的とした法律です。
今回は特定秘密保護法の漏えいに対する罰則や課題点について説明していきます。


秘密にアクセスできる者についての「適性評価制度」

特定秘密を扱うことが想定される行政機関の職員、都道府県警察の職員、契約事業者(民間人)に対して適性評価を実施します。その結果、特定秘密を漏らすおそれがないと認められた者は、特定秘密の取り扱いの業務を行うことが可能となります。ただし、行政機関の長や国務大臣、内閣官房副長官、内閣総理大臣補佐官、副大臣、大臣政務官などは適性評価の対象にはなりません(第11条)。
適性評価の調査事項は、次の通り多岐にわたります(第12条、第15条)。

  1. 特定有害活動及びテロリズムとの関係に関する事項
  2. 犯罪及び懲戒の経歴に関する事項
  3. 情報の取扱いに係る非違の経歴に関する事項
  4. 薬物の濫用及び影響に関する事項
  5. 精神疾患に関する事項
  6. 飲酒についての節度に関する事項
  7. 信用状態その他の経済的な状況に関する事項

特定秘密の漏えいに対する罰則

「特定秘密」は、我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがある情報であり、その管理及び取扱いには重大な責任が伴います。そのため、特定秘密の漏えい等に対して、次のような罰則が規定されています。(第23条~第25条)

漏えいに対する罰則
  処罰の対象 詳細 罰則
特定秘密を取り扱うことを業務とする者による漏えい 故意 10年以下の懲役
1千万円以下の罰金
過失 2年以下の禁錮又は
50万円以下の罰金
公益上の必要により行政機関から特定秘密の提供を受け、これを知得した者による漏えい 故意 5年以下の懲役
500万円以下の罰金
過失 1年以下の禁錮
30万円以下の罰金
 外国の利益等を図る目的で行われる、特定秘密の次に掲げる取得行為 1) 人を欺き、人に暴行を加え、又は人を脅迫する行為
2) 財物の窃取
3) 施設への侵入
4) 有線電気通信の傍受
5) 不正アクセス行為
6) 2)~5)以外の特定秘密の保有者の管理を侵害する行為
 10年以下の懲役
1千万円以下の罰金
 上記故意の漏えい又は取得行為の未遂、共謀、教唆又は煽動  ① ③5年以下の懲役
② 3年以下の懲役


特定秘密保護法に対する懸念と課題

特定秘密保護法の制定に対しては、次のような懸念が持たれています。

  1. 「政府が自由に秘密指定する」ことを容認してよいのか。
  2. この法律には「その他」という文言が多数用いられ、秘密の範囲が指定権者の裁量で容易に拡大できるようになっている。時の政権にとって「不都合な真実」が安易に秘密に指定され得るのではないか。
  3. 密約や交渉上の不手際、不祥事なども指定される懸念はないのか。
  4. そもそも何が指定されたかもわからないまま、特定秘密が増えていくのではないか。
  5. チェック機構として「独立公文書管理監」、「情報監視審査会」などを設けているが、特定秘密を指定した大臣に対し、資料の提出や説明、是正を強制できる権限はない。これで特定秘密指定の妥当性を検証できるのか。
  6. 30年を超える場合は「内閣の承認」とあるが、閣議で大臣が文書をチェックすることは不可能で、リストが提出されれば無条件で承認することになる。「60年まではOK」とばかりに秘密指定が延長されるのではないか。
  7. 60年以上に設定できる情報も範囲が広く、永久に指定し続ける可能性もありうる。
  8. 指定から30年を超える文書は国立公文書館等に移管されるが、秘密指定から30年以下の文書は総理大臣の同意を得れば廃棄も可能。各行政機関が他の文書に混ぜて特定秘密を廃棄する可能性はないのか。

秘密と情報公開のバランスは、どこの国でも常に綱引きが行われており、政権交代によって方針が変わることもあります。米国では、ブッシュ政権の時には秘密保護に力点が置かれましたが、オバマ政権になると情報公開に力点が置かれるようになりました。トランプ政権では情報公開というよりも、X(旧Twitter)による情報発信が目立ち、国民が知りたい情報をオープンにするという視点で捉えると少し後退したように感じます。
また一部には、「日本の特定秘密保護法は、国家安全保障と情報への権利に関する国際原則であるツワネ原則を参考にしていない」という批判も聞かれます。

一方で、「ツワネ原則は、人権を極端に重視した民間団体からの提案なので安全保障上の要請の観点が少ない。例えば、2000年11月の国連総会で採択された『国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約』では共謀罪を盛り込んでいるのに、ツワネ原則は共謀罪を規定しておらず国際常識とずれている。」という指摘もあり、特定秘密保護法で何を規定すべきなのか、未だ多くの課題が残されています。

まとめ

特定秘密保護法は、国と国民の安全を守ることが目的として成立されましたが、様々な課題や問題点があるのが現実です。秘密を保持する政府は、国民や社会からの信頼性を高める努力を最大限に行う必要があると感じられます。最近では、経済安全保障上の機密情報を扱う人を認定する「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」の法整備も動き出しました。今後の進展に注目してみましょう。
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