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公文書管理法のぞれぞれの手続きについて解説

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2023/11/27
公文書管理法のぞれぞれの手続きについて解説
公文書管理法は、公文書管理の基本的事項(行政文書・法人文書の適切な管理及び特定歴史公文書等の適切な保存及び利用)を初めて法律の規定で定めた点に意義があります。

以下、そのポイントをもう少し詳しく見ることにしましょう。

公文書の作成義務

我が国における行政機関の重要な意思決定は、文書に基づいて行われることが通例となってきました。いわゆる事務処理原則としての文書主義です。
しかし、基本原則であるはずのこの文書主義原則も一部の省庁の文書管理規程で規定されるに止まり、これまで法律の規定は見当たりませんでした。情報公開法施行令旧第16条1項2号における文書作成義務も政令事項だったのが、今回初めて法律の規定で義務付けられたことになります。

つまり「当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係わる事案が軽微なものである場合を除き、次に掲げる事項その他の事項について、文書を作成しなければならない。」(第4条)とし、法令の制定又は改廃及びその経緯その他5つの類型を掲げています。

公文書の整理

公文書の整理については、次のように規定しています。

  1. 職員が行政文書を作成又は取得した時は、その文書について分類し、名称を付し、保存期間及び保存期間の満了する日を設定しなければならない(第5条1項)。
  2. 相互に密接な関連を有する行政文書(保存期間が同じもの)の集合物である「行政文書ファイル」にまとめなければならない(同条2項)。
  3. 「行政文書ファイル」を分類し、名称を付し、保存期間及び保存期間の満了する日を設定しなければならない(同条3項)。
  4. 存期間及び保存期間の満了する日を、政令で定めるところにより、延長することができる(同条4項)。
  5. 「行政文書ファイル及び単独で管理している行政文書」(以下、「行政文書ファイル等」)については、保存期間の満了前のできる限り早い時期に、保存期間が満了した時の措置として、歴史公文書等に該当するものは国立公文書館等への移管の措置を、それ以外のものについては廃棄の措置を取ることを定めなければならない(同条5項)。

特に、第5条5項の国立公文書館等への移管又は廃棄を、保存期間が満了した時点で考えるのではなく、できる限り早い時期にどちらかの措置を決める仕組み、つまり「レコードスケジュール」の概念を導入したところが、従来なかった新しい考え方で、注目されます。

公文書の保存

公文書の保存については、次のように規定しています。

  1. 行政文書ファイル等について、その保存期間が満了するまでの間、その内容、時の経過、利用の状況等に応じ、適切な保存及び利用を確保するために必要な場所において、適切な保存媒体により、識別を容易にするための措置を講じたうえで保存しなければならない(第6条1項)。
  2. その集中管理の推進に努めなければならない(同条2項)。

第6条1項の「内容」とは、その行政文書ファイル等に個人情報などの機密情報が含まれている場合、紙文書であれば、施錠できるキャビネットなどで保存したり、電子情報であれば、厳重なアクセス制限を施したサーバーなどに保存したりすることを意味します。「時の経過、利用の状況」とは、もともと文書には時の経過とともに利用頻度が低下するという特性がありますが、紙文書であれば、これに合わせて利用頻度が高い間は事務所の書棚などで保存し利用頻度が下がると地下の書庫などに移動することを、また、電子文書であれば、移管のために長期保存フォーマットへ変換することを言います。

「適切な保存媒体」とは、特に電子情報に関し、情報技術の進展に伴ってソフトウェアのバージョンアップへの対応や必要な媒体変換などを適切に行い、長期的に安全確実な保存を行うことを言います。
「識別を容易にするための措置」とは、検索を容易にするためのファイルの分類・整理(例えばファイルの背表紙にタイトル、作成年度を明記、または色分けをするなど)及び適切なメタデータの付与などを意味します。
特に電子情報の場合はファイルの属性、コンテクストなどを表わす適切なメタデータの作成・付与が欠かせません。第6条2項の「集中管理の推進」とは、作成・取得から一定期間が経過した行政文書ファイル等を集中管理することで文書の散逸防止、移管業務の円滑化を促進する趣旨ですが、各府省共通の中間書庫制度を設け、横断的に集中管理する仕組みが想定されています。
また、公文書管理法附則第4条において国立公文書館法を改正し、国立公文書館が行政機関から委託を受けて中間書庫の役割を果たすことができる旨の規定が追加されました(改正国立公文書館法第11条1項2号、3項2号)。

公文書の移管または廃棄

保存期間が満了した行政文書ファイル等は、第5条5項の規定による定め(レコードスケジュール)に基づき、国立公文書館等へ移管するか、または廃棄することが義務付けられました(第8条1項)。従来は、改正前の国立公文書館法15条2項において、内閣総理大臣(国立公文書館)と移管元の行政機関とが協議し、そこに合意が成立した場合のみ移管が行われることになっていました。

今回、この方式が変更され、レコードスケジュールにより事前に移管措置を取ることが決定された歴史公文書等は、保存期間が満了すると国立公文書館等へ移管されることになりました(第8条1項)。このように本格的なアーカイブズ確立への道が開けたことの意義は大きいといえます。
レコードスケジュールにより廃棄措置を取ることが決定された行政文書ファイル等に関しては、特に慎重な対応が求められ、保存期間満了時に、行政機関はあらかじめ内閣総理大臣と協議し、その同意を得なければ廃棄できないことになりました(同条2項)。この項目も衆議院における修正協議で盛り込まれたものです。

公文書管理に関するコンプライアンス確保の仕組み

この法律の特長の一つは、公文書管理におけるコンプライアンス確保のための様々な仕組みを設けていることです。
具体的には、次のように規定されています。

  1. 行政機関の長は行政文書の管理の状況について、毎年度、内閣総理大臣に報告しなければならない(第9条1項)。
  2. 内閣総理大臣は、必要と認める場合には、行政機関の長に対し、行政文書の管理について報告や資料の提出を求め、職員に実地調査をさせることができる(同条3項)。
  3. 内閣総理大臣は、歴史公文書等の適切な移管を確保するために必要と認める場合には、国立公文書館に報告や資料の提出を求めさせ、実地調査をさせることができる(同条4項)。
  4. 内閣総理大臣は、公文書管理につき特に必要がある場合には改善勧告を行い、その結果につき報告を求めることができる(第31条)。


特定歴史公文書等の保存、利用

保存

この法律では国立公文書館等へ移管された特定歴史公文書等は、永久保存が義務付けられています(第15条1項)。
また、特定歴史公文書等ついては、その内容、保存状態、時の経過、利用の状況等に応じ、適切な保存及び利用を確保するために必要な場所において、適切な記録媒体により、識別を容易にするための措置を講じた上で保存し(同条2項)、その分類、名称、移管又は寄贈若しくは寄託をした者の名称又は氏名、移管又は寄贈若しくは寄託を受けた時期及び保存場所等の必要な事項を記載した目録を作成し、公表しなければなりません(同条4項)。

廃棄

保存文書が劣化により判読不能となり、保存する意味がなくなったような場合、例外的に廃棄することはできますが、誤廃棄あるいは恣意的な廃棄を防ぐために、国立公文書館等の長のみの判断では廃棄できず、内閣総理大臣の同意を得なければなりません(第25条)。

利用

国立公文書館等の長は、特定歴史公文書等の保存と利用が適切に行われるように、内閣総理大臣の同意を得て、利用等規則を設けなければなりません(第27条1項、3項)。
そして特定歴史公文書等の保存及び利用の状況について、毎年度、内閣総理大臣に報告しなければならないのです(第26条1項)。 特定歴史公文書等の利用について、国立公文書館等の長は、利用請求があった場合、利用制限事由に該当しない限り、利用させなければならないとし、利用請求権を明確にした点は、この法律の特色の一つとなっています(第16条1項)。そして利用制限事由に該当するかどうかの判断については、利用請求のあった特定歴史公文書等の作成または取得からの時間的経過を考慮すると同時に、移管元の機関からの意見を参酌しなければならないとしています(同条2項)。また利用請求に対する処分等に不服がある場合は、異議申立てをすることができるようになっています(第21条)。

公文書管理委員会

この法律において特筆すべきは、公文書管理の機能強化のため、内閣府に外部の有識者で構成する第三者機関である公文書管理委員会を設けたことです。
委員会の委員は、公文書管理に関して優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命することとなっていますが(第28条)、委員会は数多くの政令事項及びいくつかの重要事項についての諮問を受けるほか、必要に応じて関係行政機関の長または国立公文書館等の長に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができるとしています(第29条、第30条)。

公文書管理委員会では、「政府は、この法律の施行後5年を目途として、この法律の施行の状況を勘案しつつ、行政文書及び法人文書の範囲その他の事項について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」(公文書管理法附則第13 条)という規定を受けて、2015年(平成27年)9月から公文書管理の在り方について検討を開始し、地方公共団体との意見交換や、公文書等を活用して優れた研究を行っている有識者からのヒアリング等も行い、2016年(平成28年)3月に「公文書管理法施行5年後見直しに関する検討報告書」としてとりまとめています。
お役所任せの現在の仕組みに第三者的なチェック機能を導入することとなる公文書管理委員会には大きな役割が期待されます。

地方公共団体の公文書管理

地方公共団体は、この法律の趣旨に則り、保有文書の適正な管理に関する施策を策定し、実施するよう努めなければならないとの規定が盛り込まれました(第34条)。従って各自治体は、これまでの文書管理規程を条例化するよう求められることになります。
この法律そのものを自治体に適用しないのは、地方自治の原則を尊重したためで、これは情報公開法制定時に取られた方式と同じです。

まとめ

公文書管理法は、①文書をきちんと作成する ②文書を勝手に捨てない ③残すべき文書は永久保存する
この3つを様々な手段を用いて確保する仕組みを定めたものといえます。
一見、簡単に行えそうな作業に見えても日常の業務と向き合っている職員にとっては意外と難しく、常に意識をしていなければ実行できません。
公文書管理法の制度面を整えたことにより、それぞれの職員が文書管理に関して何をすればよいのかを理解でき、文書管理に関する意識も向上するものと考えられます。
公文書管理法の施行を機に、我が国の公文書管理が大きく前進することが期待できますね!
日本レコードマネジメントでは行政機関が保有する公文書・資料、歴史的記録等の「情報資産」に対し、利便性・セキュリティ・コンプライアンスに対応した運用サポートの実績があります。お気軽にご相談ください。